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字展完了のご挨拶

 令和2年4月8日、23時、最後の字展が無事に終わりました。
 平成と令和を両方またいだ展示でした。
 
 部屋を字でいっぱいにしたい。
 漠然とした思いを形にするきっかけをくださったneccoのオーナー、アラキ氏には本当に感謝の言葉以外思い付きません。
 はじめは小さなグループ展でいいと思っていたところ「こういう展示を待っていたのです!」という声とともに参加してくださった多くの作家の皆様もありがとうございました、あなた方は私の誇りそのものです。
 珍しい展示だぞ、と足を運んでくださった皆様も本当に本当にお世話になりました。見に来てくださる方々がいなければ、私たちはただ自己満足の作品になってしまいます。誰かに見てもらうことで作品は完成し、そうして私たちも作品も育っていきます、心からありがとうございました。
 
 今回は新型感染症のこともあって、断念すべきかとも思いました。
 出展者の一人でもが不安を口にしたらやめようとも思いました。誰かが不安に思う展覧会は私の趣旨と反するのではないかと。
 ですが、誰もが(と、わたしは思っているのですが)やめたりしないよね、という期待をもって待ってくださっていたと信じています。そうしてアラキさんがneccoでの展示はやるよ、と言ってくれたのも背中を押してくれる大きな言葉でした。
 
 新型感染症の話がちらほら出始めたころから、何かおかしいぞ、と思ってこれは準備が必要ではないだろうかと感じていましたが、どこかで遠くの世界の話のように思っていたことは否定できません。
 急激に変わる情勢にも慌てましたし、油断していたせいでマスクは手に入りませんでしたが除菌ジェルやシートなどの確保が間に合いました。
 そうして今回は、マスク・ノンアルコールの除菌シート・アルコール除菌シートの詰め替えなど、多くの方々に寄付をしていただけました。
 心からお礼申し上げます。
 マスクがあることで安心して展示を見ることができる方々もいたと思います。
 いざとなったら数十枚マスクを自作しようという気持ちもありました(布で)、でもこのマスクがあることでどれだけ心強く、マスクなくてもいらしてください、と声を大きくして言えました。ありがとうございました!!
  
 後々になったらそれも思い出話と笑えるだろうというには、新型感染症の被害はあまりにもつらいものです。今もまさに感染症で苦しんでいる方、感染症を広げないための努力が続けられ、こうした展示会もライブや演劇などエンターテインメントの世界は苦境に立たされています。
 たぶん、もっともっと来たかった方もいらっしゃると思います。家族の反対で断念したり、不安で断念したりした方も多かったと思ます。表現する側も見る側もどちらも苦しい状態だと思っています。
 美術・芝居・音楽・文学、エトセトラ、確かに私たちの活動は生命を維持するために大きな役割を果たしてない、と言われたらそうかもしれませんが、心を支えるためには必要不可欠ものです。ですから、芸術の火を絶やさぬよう、これまで以上に精進しながらもっともっとなにか楽しいことをしていけたらと私は思います。
 
 さて、5年の月日を振り返ります。
 皆勤賞の作家たちもいます。毎回楽しみにしてくださって本当にありがたかったです。
 多くの「展示処女」を頂戴いたしました(笑)下世話な言い方でした、すみません(笑)
 でもそこから大きく羽ばたいていった方もいます。続けていくことの難しさを味わった作家さんもいらっしゃるでしょう。のんびりとした活動で楽しかった、とおっしゃってくださった方もいます。
 
 字展は、字でいっぱいにしたい、とは思ったけれど「書道がいい」とか「活字がいい」とか「フォントがみれたらいい」とかいうような型にはまった展示にはしたくありませんでした。
 私自身が現代アートの末席にいるという自覚もどこかにありましたし、芸術性を高めていく素晴らしい展示も大好きですけれど、そうではなくて、自分もいけるかもしれない、できるかもしれない、というそういう可能性と挑戦する気持ちを育てる、そうしてそういう気持ちにチャンスの場を設ける場所になればいい、と思ってこれまで主催してきました。
 neccoという場所を知ってほしいのもありました。
 私は大きな人脈もなく(今もですが)、何かに所属もしていません。
 一匹狼みたいなかっこいいことは言わないですが、ちょっとめんどくさがり屋でやりたいことしかできないし、そんな私が主催ができるだろうか、とも考えたこともありましたが、そんな私でも主催をつとめさせていただけました。
 字を絵で表現しよう、とか、立体で表現しようとか、写真で表現しようとか、使っている道具に・手法に新しいものは特になかったとは思うんです、もちろん熟練した技もありますし、工夫も多くあり、それぞれの発想力や表現したいという思いが形になって展示ができました。
 
 私は詩をかくものですから、詩や小説といったものでも展示になるのかな、という声にもなりますとも!と答えました。
 こういうことがやりたいのだけど、と相談されたらできる限り実現に向けて一緒に考えたりもしました。
 字は、何かを伝達するために生まれたものなのでしたら、抽象的になっても自分が字を生み出したとしても字をまた別のものに具象化したとしても、その可能性は無限大だと私はいつも思っています。
 参加してくださった作家の皆様も、見に来てくださった皆様も、見に行くことはできないけど楽しみにしていたとおっしゃってくださったみなさまも、みんなみんな字展の参加者だったと私は思っています。
 
 楽しく遊んで行ってくださいね、が私の中で重要なワードでもありました。
 生み出されたものが例えば苦しみからでも、悲しみからでも、そうしてもちろん喜びなどなどの感情からでも、あるいは創作という一点に集中して大きな感情を入れないものであっても、受け取る側が何かを感じられたらいいなと思いました。
 字展は、可能性の展示でもあったのです。
 ベテランも初心者も同時に肩を並べて展示ができて、かつ、ベテランも初心者もどちらも新しい発見と学びがある、表現の幅を知ることができる、見る側も自分にもできるかもしれないというわくわく感を感じることができる、見る楽しみを徹底的に味わえる、そういう展示であればという思いは一貫してありましたから、そういう展示になれていたらいいなと思ってます。
 本当に本当に多くの可能性と挑戦をありがとうございました。
 
 字展はファイナルですが、また場を変え名前を変え似たコンセプトの展示があってもいいんじゃないかと私は思っているんです。
 再び面白い展示を主催できたらと思います。
 アラキさんがつけてくれた名前でしたが「字」展以外の言葉があるなら私は教えてほしいと思うぐらい、みんな真摯に「字」と向き合った時間であったと思います。
 
 最後にもう一度、展示の場を与えてくれたneccoのオーナーアラキさん、本当にありがとう。
 支えてくださった皆様、本当にありがとうございました。
 心から感謝いたします。
 
 本日4月9日は搬出日です。
 きれいになったneccoの様子を最後のtweetにして、字展は完了となります。
 多くの感動をありがとうございました。


字展 主催 裕樹 

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